研究テーマ II ヒト-ロボットの新しい協働技術

<現在までの進捗状況及び達成度>

  1. 中高年の運動不足を解消するロボティック・エクササイズマシン

中高年の生活習慣病の予防,高齢者の転倒などのアクシデント防止に日常の運動,身体活動が重要であるといわれている.ここでは,高齢者の筋力の特徴を明らかにする研究ならびに高齢者のトレーニング方法に関する研究を実施している.

  1. 転倒誘発路面における歩行分析

高齢者の転倒防止のためには,転倒しやすい路面でどのように歩行しているのかを明らかにする必要がある.実際に誘発路面を利用し歩行解析を行った.その結果,転倒誘発路面での特徴的な歩行パターン(足関節角度,重心位置)ならびに筋活動パターンを明らかにした.

  1. ピンチング動作における力調節の主観と客観

拇指と示指によるピンチング力を定量化する機器を開発すると共に,視覚提示による力制御ろ機械的外乱によるピンチング力の制御を行えるシステムを開発し,相対的努力感(主観)によるピンチング時の客観的出力との関係を明らかにした.

  1. 膝蓋腱強化を目的としたトレーニング法

膝蓋腱を強化するためのトレーニング法を考案し,その効果を検証するため,ロードセルと超音波診断装置を用いて膝蓋腱の力学的性質を計測した.その結果,最大筋力の70%の力での下肢伸展5回,計5セットを3日に1回のペースで6週間行なうだけで,膝蓋腱の剛性を144%に増大することが確認された.

  1. 腱強化のメカニズムの解明

腱強化のメカニズムを解明するために,腱の微細構造と力学的性質の関係について検討した.腱内部でコラーゲン原線維が長軸方向に並び,原線維同士をプロテオグリカンと架橋結合が横方向に連結することで,腱は長軸方向に大きな強度を獲得していることが明らかになった.

  1. 身体活動を見守る日常活動ウォーキング支援ロボティック・デバイス

日常生活中の身体活動,運動を記録し,運動量,身体活動量ならびに心機能を24時間モニタし続け,身体活動の過不足のアドバイス,異常の徴候を未然にユーザに警告しうるシステムの開発研究を実施している.

  1. 携帯型小型身体活動モニタ装置

マイクロコンピュータ技術ならびに小型3軸加速度センサを組み合わせたパームトップサイズの日常生活における身体活動モニタ装置を開発した.内蔵のメモリカードに約1週間分の加速度波形データが記録できる.また,この装置をユーザの腰背部に装着させることにより,歩行などの周期的な運動に伴う絶対空間における体重心の運動軌跡を再現するアルゴリズムを開発し,坐位,臥位,立位,坂道,階段歩行など,日常生活における行動形態を類推することが可能であることを示した.

  1. フェールセーフな福祉ロボットのための要素技術

福祉ロボットを初めとする人間共存型ロボットの安全性に関して,一部が故障しても安全性が保たれるフェールセーフな機構やセンサを開発している.

  1. 福祉現場のニーズ調査

県立リハビリテーションセンターと連携しながら,福祉ロボットの導入時における安全性・倫理面に関して,福祉ロボットおよび使用者の特性の違いにあわせた提案を行った.

  1. フェールセーフ3軸力センサ

福祉ロボットに搭載するためのフェールセーフな3軸力センサについて提案した.試作した結果,基本コンセプトの有効性は確認し,構造的に改良すべき点を明らかにした.

  1. 車いすのための安全機構の開発と快適性評価

車いすのための安全機構を試作,検証した.また,高機能車いすの快適性に関して実験を行い,自律神経系と快適性の関係について有用な知見を得た.